伊坂幸太郎さんの「フーガはユーガ」を読み終えたとき、
ひとつ、どうしてだろうと思うことがありました。
どこかに答えがあるかと思い、気を付けて読み直してみたのですが、
答えを見つけることができませんでした。
そこで、伊坂さんの小説に詳しい方にも、その疑問をぶつけ、
ご意見をうかがったところ、これは伊坂さんの気持ちを
想像するしかないとの思いに至り、ずっと考えていました。
「想定外の外」という言葉です。
この言葉を、わたしはとても気に入っています。
268ページで、優我が言った言葉ですが、この言葉は、
高杉が優我に言った言葉が基になっていると思いました。
その高杉が言った言葉は「想定外の外」ではなく、
「想像外の外」というものです。(25ページ)
「想定外」と「想像外」
高杉から「想像外の外」という言葉を聞いた優我は、
その表現が気になったと言っています。
ところが、優我自身が使った言葉は「想定外の外」です。
どうして、変えたのでしょう。
そこが、気になったのです。
ある方から、敢えて対峙させたのではないか、
とのヒントをいただくことができました。
なるほど。
そこで、それぞれの意味を調べてみました。
「想像」
実際には経験していない事柄などを推し量ること
(デジタル大辞泉より)
「想定」
ある条件や状況を仮に設定すること
(デジタル大辞泉より)
これらから考えると、瞬間移動を経験している者といない者との違いが
言葉の違いに表れたのかもしれません。
高杉にとって、瞬間移動は、実際に経験していないことですから、
「想像のもの」なのでしょう。
一方の優我にとっては、この日、この時刻には瞬間移動が起きるという、
確信があり、瞬間移動は想定内のものだったと思います。
だから、優我は敢えて、高杉の言った「想像外の外」という言葉を
「想定外の外」と言い変えたのでしょうか。
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高杉、おまえにとっては想像外のことでも、
僕にとっては想定内のことなんだよ。
だから風我は、想像外の外から来るのではなく、
想定外の外から来るんだ。
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という思いなのではないか、と想像してみました。
想像を膨らませるという楽しみを、またひとつ味わいました。
「フーガはユーガ」は奥が深いです。
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